唐招提寺へのみち その1

今回は唐招提寺を紹介します。唐招提寺は私が古建築を廻り始めたきっかけになった寺院です。唐招提寺は薬師寺から北へ徒歩10分ほどの場所にあります。薬師寺とセットでいつも来ています。この記事では唐招提寺の核である金堂と鑑真和上の廟、そして戒壇を紹介しようと思います。

鑑真と唐招提寺

唐招提寺は鑑真のためのお寺です。鑑真は唐から日本に来るために、五回も航海に失敗し、六度目の航海でようやく日本に着いたときには失明していました。

鑑真が日本に来た当初は五年ほど東大寺で過ごしていました。現在の唐招提寺の場所は新田部親王の土地を鑑真がもらい受け、唐招提寺の始まりとなります。

現在の伽藍は鑑真の没後、整備されていきました。

唐招提寺の伽藍

現在の唐招提寺はなくなっている建物が多いために、明確な伽藍というものがわかりにくくなっています。

法隆寺でも伽藍の外に講堂があったように、ここも金堂まで回廊があり伽藍の外に講堂があるという形を取っていたそうです。

唐招提寺は建物の中に入れるところが新宝蔵以外に一つもないため、建築は外からのみの見学となっています。

境内案内図 赤枠がこの記事で紹介しているところです

唐招提寺の入り口南大門です。昭和40年頃の再建ですが、立派な門です。悲しいのが、壁に傷をつけて名前を書いたりされています。

金堂 国宝 奈良時代

唐招提寺の金堂は私が伝統的な建築を見て廻るきっかけにもなった建築物です。

一番初めに来たときは、屋根の改修工事中で、工事の見学でした。その時は正直大きな建物だな~くらいでした。

唐招提寺は何回か来る機会があり、何回目か忘れましたが、あるとき金堂のすごさに気づきました。

金堂は和様という建築様式なのですが、軒先に見える組物のバランスの美しさに感動したのを覚えています。

それまでに、お寺はたまに見に行っていましたが、この金堂は他とは違うなとその時気づきました。

ただ金堂の屋根に関していうと、勾配がきついために重厚な感じにはなっています。

何度も改修されて屋根勾配が大きく変わってしまい創建当初の軽やかさが失われてしまっていると言われていますが、それはそれで力強く、おおらかな感じで私はいいのではないかと思っています。

南大門を通って、正面から見た金堂です。何度来ても南大門を通ってこの金堂を見るといつも感動します。

妻側から見た金堂です。軒がだいぶ深いのがわかります。創建当初は棟の高さが今より3mほど低かったようです。

金堂は前面1間が吹きさらしになっています。法隆寺の金堂との大きな違いがここにあります。

法隆寺では人が拝む空間はありません。現在は裳階がついて人が入れる空間がありますが、裳階のない時代は金堂の前にある石から拝んでいました。

この金堂では雨でも拝めるようになっています。人間が仏に近づけるように人間のための空間ができています。これは大きな変化だと思います。

金堂の組物は和様の三手先(みてさき)の完成形と言われています。よく見ていただくと薬師寺との違いがわかると思います。垂木は二軒(ふたのき:垂木が二段になっていること)下の垂木(地垂木)が円、上の垂木(ヒエン垂木)が角の地円飛角となっています。

鳩除けのネットがあり組み物の観察がしにくいですが、組物で構成される軒裏は非常に美しいと思います。

柱頭は少し丸みを帯びています。天平時代の柱の特徴です。柱頭を切りっぱなしにしていると少し固い印象になります。

鑑真和上の廟

唐招提寺に鑑真和上の廟があります。ここでも私は感動したのを覚えています。

鑑真のお墓なのですが、ドラマチックな空間の作り方になっています。これは私がただそう感じただけで、作者の意図とは違うかもしれませんが、せっかくなので、書いてみます。

鑑真和上の廟は敷地の北東にひっそりとあります。小さな門があり、門をくぐると少し勾配がついた坂になり、廟まで緩やかな下り坂になっています。

両方に苔むしたヒノキ?の林があり、少し薄暗くなっています。その薄暗くなった道を下っていくと小さな橋があります。

その橋を渡ると灯篭があり、その前まで来ると上から光が落ちてきます。

薄暗い坂道で気を静めたあと、光が急に落ちてくると、何かハッとさせられるものがありました。

ただそれが10年くらい前の話で、今回行った時は木の枝が伸びて灯篭周辺も少し薄暗く、以前のような体験は残念ながらできませんでした。

曇っていた影響もあるかもしれませんが、その当時はこの体験を作者が意図しているように思いました。

廟の入り口の門をくぐると鬱蒼とした下り坂です。気分は高揚することなく、廟に向かうことになります。6月の末で苔の緑がとてもきれいでした。廟なので、神聖な雰囲気があります。

昔はこの灯篭の場所当たりは光が落ちてきていました。天気などの条件もあるとは思いますが、木枝はかなり伸びてきています。すっきりと晴れた日なら、この場所も光がさしているかもしれません。

戒壇

戒壇は僧になるために戒を受ける場所です。もともと建物があったそうですが、今では基壇の部分しか残っていません。

基壇しかありませんが、なにか荘厳な感じがします。雰囲気が日本ではなくインドのような感じです。

基壇の上にある石の塔は、昭和53年にインドの古塔を模したものです。石の塔一つでインドっぽくなっています。

なかなか雰囲気のある場所です。

戒壇です。僧になるためにはこの階段を昇らなければなりません。

どうでしょうか、インドの遺跡みたいな感じはしないでしょうか。初めて見たときはこの異様さに見入ってしまいました。

その一まとめ

その一で建築物は金堂だけですが、廟や、戒壇など見所があります。

金堂は奈良時代の雰囲気を感じられる建築物です。写真は撮れませんが、仏像も素晴らしいです。

廟、戒壇ともに雰囲気がある場所なので、唐招提寺に来られた際は一度行ってみてください。薬師寺も近いので、一緒に行かれてみてはいかがでしょうか。

白鳳伽藍の復興 薬師寺

唐招提寺への行き方

唐招提寺は奈良市五条町13-46

最寄り駅は近鉄橿原線西ノ京駅です。駅から歩いて徒歩約10分程度になります。

駐車場もあります。