名庭園の記憶と記録 瑠璃光院の陰影礼賛

瑠璃光院、そこは光と影が織りなす庭園芸術が繰り広げられる場所である。

男はこの日近くで用事があり少しの時間瑠璃光院に立ち寄った。この日は曇り空で、湿度の高い日だった。洛北の湿った空気が苔や、木々の緑に生命力を与えていた。

男は期待を胸に門の前に立った。

門のところに拝観受付がある。

男「大人一枚ください」

受付の人「2000円になります」

男は焦った!!

瑠璃光院とは

瑠璃光院は叡山電鉄、八瀬比叡山口駅から徒歩約5分程度のところにある寺院である。

この瑠璃光院がある場所は八瀬(または矢背)といい、壬申の乱(672)で背に矢を受けた大海人皇子(おおあまのおうじ=天武天皇)が八瀬の窯風呂で湯治したことから、時代を通じて、やすらぎの地として愛されてきた

この地には明治時代に建てられた別荘があり三条実美はこれを「喜鶴亭」となずけた。

その後昭和初期にかけて、一万二千坪の敷地に庭と約二百四十坪の数寄屋造りに改築された。建築の棟梁は数寄屋造りの名人「中村外二」、築庭は佐野藤右衛門一派とされている。

現地立て札より 

男は瑠璃光院をインスタグラムで知った。「#瑠璃光院」で検索すると、7.7万件もの投稿が出てくる。ものすごい人気な場所だ。

建築はあの中村外二ということも、男はしらなかった。

瑠璃光のアプローチ

門で拝観料を払うとすぐに階段がある。山を背にした敷地なので、高低差はかなりある。

階段の石、砂利敷きも手入れが行き届いていてとても気持ちがいい。

訪問した時間が午前中だったせいか、水がまかれていたようだった。着くまでに雨は降っていないはずだったので、来客のために、水を撒いているのかもしれない。

アプローチはほとんど階段になっているが、階段を上がる度に庭への期待が増していくのが分かった。アプローチはものすごくイイ!!

受け付けからすぐに上がる階段の見返し。

途中から仕上げが変わる。段鼻は延石に踏み面は砂利に変わる。

階段を上りきると、池に石橋が掛かっている。(この写真は帰りに撮影した写真なので、来た時とは逆になっています)

この池に錦鯉が泳いでいて、緑のなかに色鮮やかな鯉がとても美しい。

瑠璃光院の内部

瑠璃光院の建物内部に入ると階段と上ったり下りたりしながら、庭を楽しむ順路になる。建物内部にはいると、自分がどこにいるか分からなくなり、いろんな角度から庭が楽しめるような構成になっている。

まず玄関を入ると二階から瑠璃の庭を楽しむことになる。

※内部は複雑になっているため、玄関横の避難経路を確認しましょう

まずたどり着くのは二階の座敷だ。

ここがインスタで大人気になっている場所か~!

この日もこの座敷で緑のリフレクションをなんとかカメラに収めようと、頑張っている人たちがいた。ほとんどが海外からきている人達だった。

漆塗の机にカメラを置いて、机を鏡のようにして撮るのがいいらしい。

二階の外側の廊下の床板は漆塗で仕上げられている。時間や季節、撮る角度で、この床板に反射する緑や、紅葉は綺麗だと思う。

この下の庭は瑠璃光院のメインの庭の瑠璃の庭になる。二階から見てもわかるように、木が高い。この木が高いおかげで、瑠璃の庭に劇的な光を落としていた。

瑠璃の庭

さてインスタグラマーを差し置いて先に進むと、階段を下りて瑠璃の庭に面する座敷にくる。机や床板に反射する緑も綺麗だが、やはりこのメインの庭はよかった。

座敷に出るとこの景色↓

庭に落ちてくる光に質量があるような感じだった。じとっとした湿っぽい光が柔らかく緑を照らしている。

庭の開いている部分は苔に覆われていて、その周りは背の高いモミジが囲っている。京都の町屋の坪庭に落ちてくる光のようだった。

この庭に石はほとんどなくて、一番下の写真の石があるくらいだった。亀に見ようと思えば見えなくもなさそうだが、亀石だろうか・・・

写真には誰も写っていないが、だれもいなくなる一瞬をなんとか撮れた。なかなかラッキーだった。

座敷のいろいろ

座敷には庭だけでなく、素敵な屏風や、瑠璃の庭にふさわしく、ラピスラズリの原石などなかなか見ものだった。

座敷に飾られていた屏風。風流陣図屏風(安土桃山時代)

この屏風は唐の宮廷の古事を図画化したものらしい。一人一本の花を持たせて陣取りゲームをしてるところらしいが、なにが楽しいのかは想像がつかない。が、金の雲の上で遊んでいるような華やかさはなかなかいい感じだ。

瑠璃石(ラピスラズリ)洒落た火頭窓の前に鎮座していた。深い青が美しい。

建築は庭を引き立たせるためか、派手なところはまったくない。技巧を凝らしているところといえば、付書院の上部の欄間くらいであった。

臥竜の庭

瑠璃の庭に分かれを惜しみつつ先に進む。

次は瑠璃の庭よりは少し小さい臥竜の庭だ。瑠璃の庭を見た座敷から廊下を歩き階段を上ったり下りたりして、たどり着く。

この臥竜の庭は池がある。錦鯉がやはりいい味を出している。紅葉の時は葉も赤くなり、鯉の色もあまり映えないかもしれないが、新緑や、紅葉前などは鯉の色彩がとても華やかに見える。

臥竜の庭の反対側の灯篭。頭がやたら長いのがいい感じ!!形のバランスが極端におかしいと違和感を感じるはずだが、この灯篭はそれがかえって面白い。まあノッポさん的灯篭だな(ふるいか)

通常は使われていないもう一つの玄関。この暗がりと光の対比がなんともいえない。陰影礼賛!!

こういうのも日本建築のいいところだな~。陰影礼賛!!

八瀬の窯風呂って!?

忘れるところだった!

ここには昔(壬申の乱)からの窯風呂があるらしい。いまでいうサウナだ!!

奥に見える葉っぱでパシャパシャしていたんだろう。座るんじゃなくて寝るんだな。赤い毛氈と窯の上のしめ縄が神聖な雰囲気を醸し出している。

こういう窯風呂で天武天皇も傷を癒したのか~!!

瑠璃光院への行き方 特別拝観時の込み具合と近くの蓮華寺もいいよ!!

瑠璃光院は叡山電鉄、八瀬比叡山口駅から徒歩約5分程度。拝観料は近くのルイ・イカール美術館とセットで2000円でした。

駐車場はないようです。

この日は平日ということもあって比較的空いていたみたいですが、秋の特別拝観時はとても混雑するそうです。平日でも海外の観光客がけっこうおられました。

土日は整理件が配布されるほど長蛇の列になるそうです。特に紅葉が始まるとものすごい人らしいです。

瑠璃光院へいくなら蓮華寺も

蓮華寺は瑠璃光院の近く(徒歩10分くらい)にある寺院です。ここもいい庭がありました。

名庭園記憶と記録 洛北の蓮華寺