名建築の記憶と記録 奈良公園建築散歩 


Warning: Undefined array key 4 in /home/bwa2019/bwablog.com/public_html/wp-content/themes/sango-theme-child/functions.php on line 38

このブログは一人の男が予期せずに名建築に出会った物語である。

男は東大寺南大門から次の目的地の元興寺に向かって歩いていた。

南大門を今までになくじっくり見た男は少し興奮していた。男は奈良公園を南大門からまっすぐ南に歩いた。すると右手のフェンス越しに何やら近代建築のような木造の建物が現れたのである。

「おやおや、こんなところに建物があるゾ。」

男はフェンス越しに建物を眺めた。そして男は衝撃を受けるのであった。

「人形束じゃないか!!」

人形束についてはこちら↓

飛鳥様式の特徴を解説。胴張の柱、卍崩の高欄、雲斗雲肘木等図解入りで解説 

旧奈良県物産陳列所 現仏教美術資料研究センター 設計 関野貞

この建物は旧奈良県物産陳列所。現在は奈良国立博物館の仏教美術資料研究センターとなっている建築物だ。こんな建築があるとは知らなかった。

奈良県物産陳列所は1902年(明治35年)に竣工、その後、奈良県商工陳列所、奈良県商工館と名称が変わり、1951年(昭和26年)から1980年(昭和55年)まで奈良国立文化財研究所の庁舎になっていたそうだ。

公開は毎週、水曜日と金曜日だけになっている。この日は土曜日で、残念ながら中に入ることはできなかった。

外観からして普通の建築ではないことがわかる。人形束(上記写真左下あたり)が入っていることをみてもこの建築の設計者は普通の建築家ではない。

設計者は関野貞という建築史学者だそうだ。卒業論文は平等院の研究で、この建築も平面は平等院を彷彿とさせる平面になっている。なるほどなるほど!どうりで細部に歴史がちりばめられているわけだ!!

窓枠のデザインはイスラム風、高欄は細すぎるくらいの部材で数寄屋も思わせる。そしてその下には割束をいれ、屋根の頂部には可愛らしい宝珠が載っている。

設計者自身が大好きなデザインをちりばめた外観は不思議に調和している。これだけ色々な様式を混ぜ合わせると破綻しそうだが、逆に豊かな表情になっていて面白い。

この建築の立面は複数のスパイスが絶妙にマッチングしたカレーのようだ。日本のカレーライスではなく本場のインドカレー!あっカリーか?

設計者の関野貞はどのような人なのだろうか。唐破風の懸魚や、蟇股、窓枠や宝珠をみても一つ一つが丁寧にデザインされたものになっている。ただ古いものを取って付けたようなものではないのが、この建築が発する魅力になっている。

外観だけみてもこの建築がとても優秀であることがわかる。内部にも今度入ってみることにしよう!!

奈良国立博物館 仏教美術資料研究センター

仏教美術資料研究センターの場所はこちら↓

円窓亭

男は旧奈良県物産陳列所の中に入れないのがとても残念だった。気を取り直して再び元興寺を目指して歩き始めた。

そして男はこの日二度目の衝撃を受けるのである。

近道をしようと道路から奈良公園の道を行こうとしたその時、男の目に何かを訴えかける建築物が飛び込んできたのである。

その建築はまるで「ほっ」っと言っているようであった。男にはこの顔が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。

このまるで人のような顔をした建築物は、周辺になんの案内もなく、そこにあった。

帰ってから調べるとこの建物は円窓亭というらしく、もともと春日大社の経庫を鎌倉時代に改造したものだそうだ。この円窓亭の周辺には梅の木が植えられていて、片岡梅林と言われている。

円窓亭は重要文化財に指定されているが、案内の看板もなくこの建築物が誰が、どのように使われていたかは全くわからなかった。

しかし、この下に鷺池という池があるので鎌倉時代以降なにかの遊びの時の休憩所みたいな場所だったのだろう。

横からみると円は正円ではないが、きれいな楕円でもない、長方形の角を大きなアールで面取りしたような形になっている。

正面から見ると人の顔、横からみると微妙な円など、どこまでも遊び心にあふれた建築物だった。

円窓亭の場所

円窓亭は浮見堂がある鷺池のすぐ近くにあり、フラグの場所は梅林です。フラグの下の四角が円窓亭です。

浮見堂

男は疲れていた。夏の暑さと二度も予期せぬ名建築に出会い、男には少し休息が必要だった。

円窓亭から坂を下りていくと浮見堂がある。男は昔デートで来たことがあることを思い出した。

男は「ボート乗らへん?」と満面の笑顔で言ったが、オンナは「のらへんっ!」と冷たく断られたことをぼんやりと思い出していた。

浮見堂は鷺池の中にある池の中の建物だ。男が心やすらかに休息するにはうってつけの場所だ!

均整の取れた屋根、頂部の宝珠も派手になりすぎず雰囲気にあった意匠だ。水の上にあるということだけでも、面白い体験だ。奈良公園を散策して少し疲れたであろう人達が吸い寄せられるようにこの浮身堂に集まってきていた。

浮身堂を遠くからみるとどうしてもここに来たくなるのはやはりこの建築物が水の上にあり、魅力的な形をしているからだろう。

浮見堂の場所はこちら

さいごに

奈良公園にはほかにも建築物がありますが、今回は散策の途中で見つけた面白い建築を紹介してみました。

仏教美術研究所はまた機会を見つけて行きたいと思います。