旧・村野・森建築事務所 現・友安製作所Cafe and bar

大阪市阿倍野区にある旧村野・森建築事務所に行ってきました。現在は友安製作所Cafe and barとショップになっています。村野・森建築事務所は建築家村野藤吾の建築事務所です。村野・森建築事務所として使われなくなった後、2017年に改装されて現在は友安製作所Cafe and Berとして利用されています。

建築家 村野藤吾

村野藤吾は関西を代表する建築家です。(1891~1984)

略歴を簡単に説明すると、九州出身、早稲田大学卒業後、渡辺節建築事務所に入所、退所後、村野建築事務所開設。その後、村野・森建築事務所に改称。

村野藤吾は大阪を拠点にして日本全国で名建築を残されました。日本の建築家の中でも一流の建築家です。

村野建築で有名な建築物は現・日生劇場、現・目黒区総合庁舎、関西大学の建築物、などがあります。他にも素晴らしい建築物を多く残されています。

村野藤吾が手掛けた建築物は多くありますが、取り壊しや建て替えなどで、現存しなくなったものも多くなってきました。

村野・森建築事務所の建築

村野・森建築事務所は事務所として利用されなくなった後、現在のショップになるまで、一部分がテナントとして使われていたそうです。そして、現在友安製作所さんが買い取り、営業されています。

地下1階、地上3階建ての建物です。昭和45年に竣工しています。まだ築50年ほどしか経っていません。(2019年現在)

今回知り合いから教えてもらって行ってみることにしました。

北側からの外観

村野藤吾のデティール

現在はショップとして営業されていて、どこまで村野藤吾のデティールが残っているか少し不安がありましたが、実際行ってみると、村野デティールを随所に見ることができました。

内部はかなり改装されていて、当時の事務所の内部は想像できませんが、外壁のタイルの仕様や、簡素な螺旋階段、オリジナルの書庫の設えなど楽しめる部分はかなりありました。

螺旋階段

外部

外壁のタイル目地は砂の粒子が荒い目地材になっています。遠くから見てもあまりわかりませんが、近くに行くとそのタイルの質感がわかります。

余談ですが、昔ニューヨークに行った時に同じような目地の外壁を見かけました。その時外壁から受けた柔らかい印象を今回思い出しました。

質感がザラザラしているため、光の反射も柔らかく感じます。

 

外部は窓が少ないために要塞のような印象がありますが。この外壁のタイルのおかげで建物全体が柔らかい感じになっています。この建築だけ見ると海外いるような感覚になります。

このデッパリは何でしょうか。中に入ると理由がわかりますが、わざわざデッパリを作らなくてもよかったところを、外壁のアクセントとして出っ張らせていました。

でっぱりの内部

村野藤吾の造形のおもしろいところが出ています。

地下があるため、地下の明かり取りのガラスブロックです。地下は現在レンタルルームになっていて、予約しないと入れないので、地下の写真はないのですが、また今度入ってみようと思います。

建物入り口の見返しです。右側の壁がRが付いた壁になっています。床のタイルはつるつるしていますが、壁のタイルの質感とうまく調和しています。建物入り口は海外の裏路地のような雰囲気です。

門扉の拡大

門扉は既製品のエキスパンドメタルを加工して作っていました。安い材料ですが少しの工夫で面白くしています。

入り口のドアの右手に、ドアの半分くらいの高さの窓があります。入口のドアは全面ガラスになっていて中を見通せますが、右手にも窓があるため、中の様子がよりわかりやすくなっています。

外部に窓がなく要塞のような雰囲気なため少し入るのがためらわれますが、この入り口が内部を見通せるため安心して入ることができます。外部との対比が入り口で感じられました。

内部から見た入り口のドア

内部

内部は改装されているため、村野藤吾を感じられる部分はそんなにありませんが、簡素な螺旋階段や、建具のおさまり、など細かい部分に村野藤吾のデティールを見ることができます。

上の写真は、現在はバーとして利用されている場所から撮った写真です。奥の螺旋階段と手すりは簡素ですが、とてもきれいです。バーの雰囲気にもあっています。

現在バーになっている場所でニッチになっている部分がありました。ここはオリジナルのままっぽいです。

 

ドアノブ

螺旋階段を上ると、2階のインテリアのショップになります。右側の大きな窓は本当は開くようですが、現在開け方がわからないそうです。実際見てもどうやって開けるかはわかりませんでした。

この窓から見えるモミジの緑がとてもきれいです。推測ですが、このモミジで四季を感じられるようにしていたのではないかなと思います。

螺旋階段の出口の扉の枠も小さな気配りが見えるおさまりになっていました。

書庫はほぼオリジナルのままだそうです。中2階レベルにも書庫があり、下りていくとカフェとつながります。面白い断面構成になっています。

書庫に行く階段

中二階の書庫へ行く階段

今回この場所を訪れて感じたのは、慈光院にも通じる部分が所々にありました。とても居心地のよい空間でした。

建築デザインの教科書 慈光院

 

さいごに 感謝+行き方

村野建築に触れられてとても楽しむことができました。

友安製作所様のスタッフの方にとても丁寧にいろいろと説明していただき、写真も撮らせて頂けたことをこの場を借りて感謝します。

この名建築が壊されず、利用されているのはとても嬉しいなと思います。

 

友安製作所様のページはこちら

友安製作所Cafe and barでは食事もできるので、建築だけではない楽しみかたもできます。

JR天王寺駅からすぐ近くなので、アクセスもとてもいいです。