このブログは一人の男が名建築と向き合った記憶と記録である。
男は夏も終わり、秋の足音が聞こえるこの時期(9月中旬)に早朝から春日大社に向かった。
朝早く春日大社の参道を歩くととても気持ちがいい。日頃俗世にまみれた、曇り切ったまなこが洗われるようだ。
春日大社の創建
創建の年代には諸説あるようだが、平城遷都後まもなく創建されたというのが有力な説になっている。
本殿について
本殿は春日造(かすがつくり)となっていて、東から第一殿となりほぼ同じ形が四つ並ぶ形になっている。
春日造は他でも多くみられる形式で、流造に次いで多い神社の形式だ。重要文化財に指定されている神社の本殿で約55%が流造。ついで春日造が20%を占めている日本のシェアNo2の様式だ。
本殿に祭られている神様は
- 第一殿 武甕槌命 (たけみかつちのみこと)
- 第二殿 経津主命 (ふつぬしのみこと)
- 第三殿 天児屋根命 (あめのこややねのみこと)
- 第四殿 比売神 (ひめのかみ)
春日大社の回廊
春日大社の回廊は朱に塗られ山中によく映えていてとても美しい。この日は朝日に照らされて、朱のグラデーションがとても綺麗だった。イイ、とてもイイ!!心が浄化されるようだ。
回廊の形式は複回廊となっていて、屋根の構造は三棟造となっている。
回廊にとりつく各門が治承三年(1179)に造られたとあったので、平安時代後期にはこの回廊ができていた。ただこの回廊が治承三年から建て替えられたのだろうか。平安後期から建っているにしては綺麗だ。もしかしたらいつかの時代に建て替えられているかもしれない。
1179年といえば、平重衡の南都焼き討ち(治承四年1180年)の前年。その際、春日大社は焼かれずに残ったようだ。
回廊には南門(なんもん)、慶賀門(けいがもん)、清浄門(せいじょうもん)、内侍門(ないしもん)と4つの門があり、各門はそれぞれ入れる人が決まっていた。ちなみに各門はもともと鳥居だったそうだ。
各門に入れる人の属性は
- 南門 藤原氏以外の姓の物の入り口として使われていた。現在では本社の正門となっています。
- 慶賀門 藤原氏専用
- 清浄門 僧侶専用
- 内侍門 内侍専用(内侍とは女性の従事者のことを言うそうです)
南門以外は規模はほぼ同じだが、慶賀門のみ格天井がはられていて、他の門とは格式が違うことが表現されている。さすが藤原氏!!
上記画像は内侍門。二重虹梁かえる股、三棟造りがわかる。
上記画像は法隆寺の東大門の断面と妻側立面。(三棟造りがわかりやすい)
慶賀門を石段の下から見上げた図。三つの門の中でも一番格式の高い門となっている。ここは現在も通り抜けることができて、藤原一族の気分が味わえる。
清浄門と内侍門から出入りはできない。
上記画像は南門。様式としては和様。神社の楼門も和様が多いのは何故だろうか。お寺のような雰囲気があるので、いつも違和感を感じている。
もともと神様のいる場所に門はなかったはずなので、門が必要となった時、建築の意匠をどうするかでだいぶ悩んだのか・・・?
回廊の一部には榎本神社も内蔵されている。朝下から見上げると朝日がさして神々しい。
回廊の中
回廊が朝日に照らされてきれいだったので、回廊ばかりみてしまった。
南門から入るとすぐ右手に特別参拝の受付がある。500円を納めると回廊の中をぐるりと廻ることができる。
特別参拝の受付は午前9時からとなっている。この日は寝ずに朝早く来たので、特別参拝はできなかった無念。男はこの後新薬師寺で寝てしまうのである。
回廊の中は上記の画像。特別参拝をすると色々とみれる。
本殿を囲む中門と御門。あの向こうに本殿が並んでいる。
春日大社には吊り下げられた大量の灯篭が雰囲気をだしています。
春日大社にはこれでもかというくらい、石灯篭ともにこの吊り下げられた灯篭がたくさんある。
夜に灯がついたところを一度みてみたい。灯篭に灯を入れることはあるのだろうか。全部の灯篭に灯がともると相当幻想的な空間だろう。
灯篭
春日大社は藤も有名、回廊の内部にも藤棚あり。藤棚はここだけでなく、慶賀門を出て右にも藤棚がある。
春日大社はいつも人が多いが、藤が開花する四月末~五月上旬はさらに混雑するようだ。写真を撮影するどころではなさそうだ。
幣殿・舞殿は一つの建築で二つの機能を持った建築物だ。東側二間が幣殿で残り三間が舞殿になっている。幣殿の天井は格天井になっていて舞殿と区別されている。天井の形式だけで、区別するとは、なかなか合理的な考え方だな。
奥に見えるのが林檎の庭。左側にとても大きな杉の大木あり!
林檎の庭の杉の大木。一部が左の建物(直会殿)に飲み込まれている。ものすごくダイナミックだ!!杉が先か建物が先か気になる。
特別参拝はこの杉の下を通って戻ってくる、この木の下を通るのは面白い体験だった。(以前に行ったとき)
内侍門からみた板壁が朱に塗られている宝庫。高床になっているため、原始的な雰囲気も醸している。
回廊の外
春日大社には回廊の外にもたくさんの建築物があり、回廊や、本殿を囲む御廊と違い、回廊の外の建築物はみな朱に塗られずに本殿と差別化されている。
そのため、回廊や御廊の朱がとても引き立っている。回廊外の建築物はどれも素朴で落ち着いた建築物ばかりだった。やはり檜皮葺きの屋根は軽快できれいだ。山の中に瓦葺きの屋根は似合わないだろう。
参道を登って、南門の近くまで来ると、この着到殿がある。春日まつりの際、天皇の使いが儀式を行う場所だ。延喜十六年(916)創建で応永20年に再建されたのが現在の建物で、重要文化財となっている。
↑酒殿
春日まつりに供するお神酒をつくるところ。創建は貞観元年(859)で、江戸時代に建て替えられた。現在は重要文化財。
竃殿(へっついでん)は神饌(しんせん)を調理するための建物。
創建は奈良時代まで遡るようだが、現在の建物は嘉慶二年(1388)に再建されたもので、竃殿、酒殿ともに平成24年に屋根の葺き替え工事が行われ、現在もきれいな檜皮葺きの屋根を見ることができる。
若宮神社
本殿を見れなかったので若宮神社にいこう!
若宮神社は南門を出て東にいったところにあり、天児屋根命の子で、天押雲値命(あまのおしこもねのみこと)を祭っています。(神様の名前は覚えられない)
本殿は春日造で本社の第一殿とほぼ同じ。本殿の鳥居の前に拝殿があり、拝殿と直角方向に、細殿および神楽殿がある。
若宮神社も本社に劣らずとても雰囲気のある場所で清々しい空気が満ちていた。
上記画像右側が若宮神社の細殿および神楽殿。
上記画像の手前が細殿、馬道(めのどう)のようになっている向こう側が神楽殿となっている。
若宮神社の細殿および神楽殿は高さも低く抑えられていて、とても優美な形をしている。
若宮神社 御祭
神社といえばお祭り。若宮神社では御祭(おんまつり)が毎年12月に行われている。
御祭りのクライマックスは夜中に執り行われるそうで、神様が御旅所から神社へ帰るまで、すべての灯りを消して神様が通るのを見守るそうだ。
行った人に聞くと荘厳かつ神秘的。一度いってみよう!
さいごに
春日大社はとても人気のある神社です。
平日でも込み合うようですが、早朝に行くとそんなに混雑もしていませんでした。いかれる方は参考にして頂けたらと思います。
春日大社への行き方は別記事で書いています。もしよければ参考にしてください。
春日大社へのおすすめのアクセス方法